第一章

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まず 目を引くのは 無造作だが 青白い燐光をまとった 目映いばかりの 銀色の美しい髪 しかし 年老いてはいない。 おそらく 二十歳前後 多く見ても 三、四は過ぎていないだろう 完璧と言って差し支えがない フォルムを持った唇には 髪と同じ 銀の細工が施されたキセルが くわえられて 紫煙を吐き出している。 完璧なのは 唇だけではない 秀でた額 高く細い鼻 なだらかな曲線を描いて 尖ったアゴへと続く頬のライン そして 軽く吊り上がった、 まるで血の様な深紅の瞳。 その全てが 完全な造形美と言えた。 その醸し出す雰囲気は 男性的であって 女性的でもあった。 身に黒いマントを羽織って その隙間から 裸身の上半身が覗いている その上半身も完璧だった。 中肉中背だが 無駄なく鍛えられ これ以上に 筋肉がつくと 動きを阻害するだろう。 それは 造形美と機能美を 完璧に両立していた。 玉座に右足をたて 左肘を玉座の肘掛けについて アゴの下に左手を当て肘をつき キセルはくわえたまま 右手に持った 書物を 読んだままの姿勢で 彼らには 興味をカケラも示さない。
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