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「お兄ちゃん、いってらっしゃい!!」
「おぅ。お前もな、初音」
新学期が始まる朝、オレと初音は玄関の前で挨拶を交わした。
オレとは逆の方向に進んでいく赤いランドセルを背負った小さな背中を見つめると、ぴょんぴょんとどこか楽しげな雰囲気。
久しぶりの学校だしな。
9月1日。
時刻は7時50分。
学校までは、歩いてだいたい20分くらい。
自転車通学してもいいんだが、オレは朝日を感じつつのんびりと歩くのが気に入っている。
「おーとなしっ!!」
「おぉ、日向」
家から50メートル程離れた所でチャリ通の日向に声をかけられた。
「宿題写せたか?」
「なんとかな。壮絶な戦いだったぜ……ほら、乗れよ」
日向は自転車の荷台を指差して言った。
「お、すまないな」
軽く礼を言って荷台に腰かける。
先刻、オレは徒歩通学に魅力を感じていると言ったが、選択肢はそれだけじゃない。
日向と会ったら、ニケツで登校。
もちろんそこに暗黙の了解があるわけではなく、お互い用事があったり気が乗らなかったりする日には決行されない。
なんともアバウトな、朝の日課である。
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