573人が本棚に入れています
本棚に追加
「さぁーて行こうぜー……おっ、一人増えてらぁ」
だるそうに教室に戻ってきた日向は立華さんを見るなりそう言った。
岩沢は日向と入れ違いでバンドメンバーのところに戻っていった。
「立華さんが場所わかんないから一緒に連れていくけど、いいよな?」
「トーゼン。断る理由がわからねぇ。一緒に行こうぜ奏ちゃん」
きりっと笑う日向。これがこいつの「営業スマイル」だ。果たして効果があるのかどうかは知らないけどな。
しかしこいつも「奏ちゃん」って……もしかして慣れてないのはオレだけか?
ーオレ達三人は今、喫茶店「エンジェル」の目の前にいる。
歩くこと30分、駅前商店街のちょっと端のほうにあるエンジェルは築30年くらいの微妙に古ぼけた三階立ての建物の二回に「angel」と必要以上にかっこつけて筆記体で書かれた看板をドアにぶら下げて今日も営業中だ。
隠れ家のような店として、行動範囲のあまり広くないオレはここ以上の店を知らない。
「どうする?もう入って待っとくか?」
日向に言われてケータイの時計を見ると、4時20分。
これまた微妙な時間に着いたもんだな。
.
最初のコメントを投稿しよう!