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「入って待ってていいんじゃないか。他にいくところもないし、下手に出回って遅刻でもしたら殺されかねないしな」
「その通りだな……ゆりっぺ命令だって忘れてたぜ」
お前、そこが一番重要で怖いところだろ。忘れんな。
「じゃあ入るぞ」
「おう」
オレは木製のドアに手をかけて押し開けると、からんころんというドアに付いたベルの音と共に、水から落として作っているコーヒーのいい薫りが鼻孔をくすぐる。
「ちわーマスター」
「おぅ、悪ガキどもか」
理由は色々だが、オレ達はよくここを使っている。
何度もゆりや日向と通っている間にオレも顔を覚えられたみたいだ。
ひげ面で髪はちょっと短めで、人柄がよく、ダンディーという響きが似合うマスター。
「お、その女の子はお前の彼女か?日向のぼうずな訳がないしな」
「彼女じゃないですよ、最近こっちに越してきた新しい友達です」
「ていうかなんでオレの彼女って可能性を排除するんだよ!?」
「それはあり得ないからな」
こんなおちゃめな一面もあったりする。
しかしマスター、日向をよく観察している。
オレはマスターに後からも人が来ると説明すると、窓側の四人掛けのテーブルが三つあるエリアに案内された。
ここからは商店街の様子をうかがい知ることができる。
静かな音楽が流れ、オレンジ色がかった照明に照らされる店内はオレ達の他に六人程の客がいる。
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