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そして、あっという間に放課後。
オレは指定された場所に向かうべく一人で廊下を歩いている。
ゆりはホームルームが終わると早々に教室からいなくなり、日向と立華さんの姿も見えなかったので一人だ。
しかし旧本館は遠いんだよな。
小高い丘の上に建つ下天学校は総生徒数が2000人を越えるマンモス校で、なぜだか知らないが寮もある程だ。
人気の理由がなんだかは知らないが、その為に敷地が異様に広く移動に時間がかかるという迷惑を毎日被っている。
体育などの教室移動時はその度に時間との戦いだ。
そしてオレが目指す旧本館も今使っている本館から300メートル程離れた、部室棟のあるエリアに位置している。
旧本館の空き教室の一部も、文化部の部室として使用されているとか。
「おっ、音無じゃねえか」
下駄箱に向かって階段を降りていると、藤巻と大山が向かい側から登ってきた。
「おぉ、お前らもゆりのメール来ただろ?」
「来たよ来たよ~……仕方ないからいくよ」
大山がかなり泣きそうな声で言ってくる。
大山はゆりに対して妙な恐怖心があるみたいなんだが……なにかされたのか?確かにオレもあいつはすこし怖いというか恐ろしい部分はあるが。
「そういう訳だからよ音無、下駄箱で待っててくれよ。オレと大山は教室からバッグ取ってくるからよ」
そう言って大山の肩に手をかける藤巻。
こいつはガラが悪いくせに剣道部所属で、腕もそこそこ立つという。
そしてこの見た目も性格も相対的な二人はなぜか仲がよく、だいたいいつも一緒にいる。
「わかった。じゃあ待ってるから早く取ってこいよ」
そうして藤巻&大山は階段を上がっていき、オレは下駄箱で革靴に履き替えて二人を待つことになった。
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