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「竹山君、遊佐さん、終わったかしら?」
中に入ると開口一番にゆりは言った。
校長室はやはり使っていないためか所々黒ずんでいたり、壁の表面が剥がれていたりと、少し視点を変えると怖い雰囲気がある。
その部屋の中にすでにいたのは竹山ともう一人、髪を二ヶ所で結んだ女の子。
「ばっちりです」
「完璧ですよ。あと、僕のことはクライストと」
「ゆり、あの子はいったいだれだ?」
竹山が何か言っていた気がするが、気にせずにゆりに聞いてみる。
「あぁ、彼女?遊佐さんよ。あたしの友達」
軽く自己紹介されると遊佐はぺこりと頭を下げる。
「ゆりっぺさんの友達の遊佐です。音無さん、お初にお目にかかりますね。以後よろしくお願いします」
「お、おう……よろしく」
表情をほぼ変えずに初対面の挨拶をされたのは初めての経験だった。
なんというか、人形のような子だなと言うのが第一印象だ。
「いい感じじゃない!!」
ゆりが壁にかかる垂れ幕を見て興奮中だということに気がついたのは、ゆりが声を上げてから。
彼女の眼前にはオレンジ色を基調として、少し変わったフォントで「SSS」と斜めに書かれたエンブレムをプリントした垂れ幕が貼られている。
「かっけぇじゃんか」
日向がゆりの隣に寄って言う。
「でしょう?原案はあたしが考えて、製作は竹山君よ」
「あいつがか?」
指を指す日向。
「あなたがパソコンに原画取り込んで、色付けして、こんなに大きくプリントすることができたならあなたに頼んだわ」
「む、無理だ……」
アホの日向には無理だと言いたいんだな。
しかし日向、パソコンに取り込むくらいできるだろうに。
竹山が勝利の笑みを浮かべている。
しかしこいつも頼まれたからってこんなデカイものを作るなんてだいぶアホだな。
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