tornado

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再び明かりが点くと、スタンバイしたガルデモのメンバーがそこにいた。 ギャラリーからは溢れんばかりの歓声が上がる。 入江(昨日の帰りに日向から名前を教えて貰った)がスティックを叩いて合図をすると、関根、ひさ子、岩沢がそれに共鳴したように音を奏で始める。 まだ歌ってもいないが、会場の盛り上がり方は相当なものだ。 オレ達戦線メンバーの主な仕事は、予想される「邪魔者」をこの食堂内に入れないこと。 忍者並み(と言うか忍者そのもの)の視力と運動神経を備えた椎名を屋上から全体の監視役を任せ、トランシーバーで送られてくる指令にオレ達は反応するという手はずになっている。 戦線の男連中は、外部からの「敵」の侵入を防ぐために食堂一階にある5つの入り口に陣取り、トランシーバーを構える。 立華さん、大山、竹山は力仕事には向かないため、二階から外の監視。 高松はゆりのいる階段の下で情報の中継役と、いざという時の加勢役を勤める。 配置は、一番大きな正面の入り口には松下五段、TKと2人。 他の場所には藤巻、日向、野田、オレと1人ずつ。 中でもオレの配置された場所は5つの扉で普段から最も人通りが少ない場所だとか。 オレはそんなに力がある方ではないからこの配置に少し安心した。 「しかし、ガルデモのライヴを始めて見るのがまさかこんな形でだなんてな」 オレはマイクに向かって声をぶつける岩沢の姿を視界の中心に捉えた。 普段の落ち着いた感じのお姉さんのような彼女もいいと思うが、歌っている彼女には全く別の魅力がある。 なにより時折見せる笑顔が素敵で、かっこいいのだ。 それは他のメンバーにも同じことが言える。 そして歌も演奏も抜群に上手いとなれば、ファンが増えるのは必然的な事に思えた。 と、思わず見とれていたため、トランシーバーから声が聞こえているのを認識するのが一瞬遅れた。 .
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