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「私は何故生きているのかしら?」
生きている意味がわからない。少女はその虚ろな目を少年に向け、言った。
「さぁ、なんでだろうね?」
興味がない、というように答える。その中空を見上げる少年の幼い瞳にはいったい何が写っているのだろうか。
「私たちは、死んだらどうなるの?」
変わらずにその瞳を少年に向ける少女の姿は儚く、表情には生気を感じられない。
「知らないよ」
一度だけ少女に顔を向けた少年は、その無表情を再び中空に向けた。
少年は続ける。
「知らないから、行くんだろう?」
その顔に、笑顔が浮かぶ。いや、これを笑顔と言ってよいのだろうか、その不気味な笑顔は、どこか恐ろしい。
「そうね、私達は、これで解放されるのね」
少女の顔が、笑みに変わる。こちらは、美しい。その脆さを見せる笑顔は、見るものを魅了するだろう。
少年は、その手を少女に差し出す。その姿は、まるで生者を死に誘う死神のようだった。
少女の表情は、歓喜するように、玩具をねだる子供のように、水を得た魚のように、生気に満ちている。その時が、少女の人生で初めての、そして最後の喜びだったのかもしれない。
「さぁ──逝こう、僕らの国へ」
そうして、彼らは意識を失った
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