見知らぬ彼女

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「学生にとって最大の敵は朝」とは、まさに自分のためにあるような言葉だ。 なんて感心しつつ、そんな余裕はどこにも無いだろ!と自分にツッコミを入れたくなった。 日常生活で培ったスキルを存分に駆使し朝の支度を瞬時に済ます。 文字通り部屋から飛び出た。 初夏の日差しが体を照りつける。 すれ違う人達はみな俺の必死の形相に何事かと振り向いている。 だが今は、人の視線なんか気にしてられない。自分の未来がこの走りにかかっているんだ! 「ああ、神々も照覧あれ!!」 走っている最中何故かメロスの一文が頭に浮かぶ。 まあ、俺もメロスも全力疾走だが、あちらは親友のため、こちらは己の留年阻止のためと、まったくもって背負っているモノの重みが違うな。 走りながら時間を確認する。思わず舌打ち。 タイムリミットは、あと三分。
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