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ついに手に入れた!
あたしだけのパソコン。しかもノート。
思い起こせば、一年前。友達から聞いた「百円PC」の噂──
「なんだ、あたしでも買えるじゃん」
それが引き金となって、胸の奥底でくすぶっていた「欲しい」という願望が大炎上。
すぐに未成年では購入できないという事実を知ったけど、その時はもう手遅れ。
あたしの願望は鎮火するするどころか、ますます燃え上がり、百円なら両親を説得するなんて楽勝──と高をくくっていたら、見事に返り討ち。世の中に、甘い話などないという事を思い知らされたあの日。
でも、障害って大きければ大きいほど燃えるものなのね。
校則でアルバイトは禁止されているので、頼みの綱はお小遣いのみ。
それからは、欲しい物を我慢する日々。お昼だって学食や購買を使わず、朝早く起きて用意した手作りの愛情弁当(自分への)。
お小遣いアップの交渉だって、一度や二度じゃない。涙ぐましい努力も、今となっては良い思い出。
今、こうして目の前に、あたしの──あたしだけのパソコンがある!
中古だし、OSだって二昔前のものだし、起動までに結構かかるけど、ちゃんと最初から文章を作成できるソフトだって入っている。
インターネットやメールが、なぜかできないけれど、そんなことは気にしない。
だってあたしの目的は──自分のパソコンで小説を書くことなのだから!
学校や父のパソコンでは、じっくり落ち着いて書くことができないし、小説を書いていることを、誰にも──両親にだって知られたくない。だから書くのは自分のパソコンを手に入れてからと決めていた。
パソコンを箱から出して、設定をして、いざ書き始めようとしたら夕食のお呼びがかかった。どうせなので、お風呂に入って、パジャマに着替えて準備万全、いざ出陣──ってやってから──かれこれ五時間。
その成果は──なんと、四行!
設定は四百字詰め原稿用紙。つまり、縦横二十ずつ。
どうだ、一時間に二十文字も書けていない──というか、打てていない計算だ!
はあ。才能ないのかな……あたし……
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