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突然目の前に、あたしと同い年ぐらいの、結構カッコイイ男性があらわれた。
狐につままれたような顔であたしを見つめる彼。
驚きのあまり、そのままの体勢で硬直するあたし。次の瞬間──
「きゃあ──────────ぁっ!」
叫びつつ、体を抱えるようにしてその場にしゃがみこんだ。
まったく、乙女の水浴を覗くなんて最っ低!
「す、すまない! ま、まさか人がいるとは思わなかったから──」
慌ててその場を離れる彼。少し行ったところで、背中を向けて立ち止まり、
「ひとつだけ訊かせてほしい……」
「ちょ、ちょっと待って」
とにかく服を着たい。あたしは辺りをさがした。
近くの大きめの石の上に、丸められた服らしき布のかたまりがある。
ほかには見あたらないので、たぶんアレがあたしの……だと思う。
たぶん──そう、たぶん。だって、気が付いたら、いかにも「森のなかの湖」って感じのところで水浴びしてたんだから仕方がない。
もちろん……その……裸で……。
ホント、いつここにきて、いつ服を脱いだのか、全然記憶にない。
とにかく、今はそんなことを考えてるより、服を着よう。
あたしは石の上の服を手にして驚いた。
これって──パジャマ?!
しかも、あたしのいちばんのお気に入り。
──わかった、これって夢だ。
ほらね、ほっぺをつねったって痛く──い、痛い……。
──うんん、そんなことで、めげちゃダメ。
前に、夢のなかで膝をぶつけて痛かったことだってあるし。
そう、これは夢。
だれがなんと言っても夢だ。うん!
「もう、いいかな?」
あ、いっけない! 彼を待たせてたんだっけ。
あたしは急いでパジャマを着る。
濡れていて、着にくいし気持ち悪い。
そう思った瞬間、身体や髪は乾いていた。
現実だったら、こんなに都合よく乾くわけない。やっぱこれは夢なんだ。
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