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「よ、良く言われるの。ミスティア──様にそっくりだって。『ティア』って言ったらミスティア様の愛称で有名でしょ?」
嘘をつく。お姫様を呼び捨てはさすがにマズイと思って「様」を付けた。
「そ、そうなのか。すまない、あまり流行に詳しくないもので……」
どうやら納得してくれたみたい。
王子様だから、世間知らずなのかな──って、なんか人事みたいだなぁ……、自分で考えたキャラなのに。
でも、よくよく考えてみたら、夢なのだから、なにも慌てることも嘘をつくこともなかったのでは……
まあ、なんとか誤魔化せたからいいか。
「改めて、名前を教えてくれないか? 変な意味はない。ただ純粋に知りたいだけなんだ」
彼の真剣な眼差しに、「美織。霧島美織」
「ミオリか……いい名だ」
ラーサは呟くように言うと、「ティアを見つけたら、キミの事を話してきかせよう」
「そ、そだね☆ 早く……見つかるといいね、ティアさんに」
あたしは微笑んでみせる。
ラーサは「ああ」と頷くと、「じゃあ」と言って、歩きだした。
彼の背中に向かって、あたしは心の中で言った。
──安心して、ハッピーエンドにするから、必ず会えるよ。(そう、うまく行くかな?)
不意に、どこからか聞こえてくる不気味な声。あたしがイメージした通りの声。
この声の主は──魔王。
(ほう、なかなかいい勘をしている)
あたしの考えていることが、魔王にはわかってしまう?
(その通りだ、キリシマ・ミオリ。この世界の創造主よ)
どうして……
(知っていて当然だ。おまえをこの世界に召喚したのは、この私なのだから。
おまえを消すためにな……)
ええっ?!
(この世界を支配することは、私の力をもってすればたやすいことだ。しかし、おまえの気分しだいで、いつ消えるともわからないこの世界に興味はない。だから私は、おまえの住んでいる世界が欲しい)
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