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な、なによそれ……
(創造主であるおまえを殺し、私はこの世界から抜け出す)
そんなことできるわけないでしょっ!
(さて、それはどうかな。
フフ……まあ感謝するのだな、自らが創りだした世界で永遠に眠れることに……)
「…………」
それっきり魔王の声は聞こえなくなった。
あたしの小説の登場人物が、あたしを殺そうとしてる?!
ふっ……おもしろいじゃない!
あたしは駆け出した。
ラーサが歩いていった方に……。
──みてなさいよ! このまま魔王を消しちゃうのは簡単だけど、作者のあたしに喧嘩を売ったことを、たっぷり後悔させてやるんだからっ!
「ダメだ!」
ラーサに怒鳴られて、あたしは思わず首をすくめた。
「あ、いや、すまない。つい、その……」
彼はうつむき加減でそう言うと、少しの間黙っていたけど、
「実は、この旅は、ただの人捜しの旅じゃないんだ」
あ、そっか、あたしが全部知ってること、彼は知らないんだもんね。
あたし「ティアさんを捜すのを手伝う」って言っただけだから、ただ軽い気持ちで人捜しの手伝いをしようとしてる──とか、そんなふうに思われちゃったんだ。「すごく、危険な旅なんだ。だから、きみを連れていくわけには……」
ちょっと困った顔をしてる。
そっか、あたしが怖がると思って、魔王のことは黙ってるつもりなんだ……
だったら、あたしは魔王を倒すために旅をしている女剣士って設定にして、一緒に旅をするように──
「ん?」
気が付くと、ラーサが怖い顔をして、背の高い雑草が生い茂る森の中を見ていた。
「ラーサ?」
「ミオリ、僕から離れるな」
ラーサが森の中の一点から目を離さないで、ぼそっと呟くように言った。
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