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この緊迫した空気──もしかして敵?!
あたしの耳にも、ハッキリとガサガサって茂みが揺れる音が聞こえた。
その音がどんどん近づいてくる。
──何か来る!
すぐそこの茂みが揺れた。
一瞬、あたしは息をのんだ。
茂みをかき分けでてきたのは、でっぷりと太った、男……なの?
胸は出てないから、たぶんそうだと思うけど、はっきりとはわからない。
だって、その顔がまるで豚ような──というよりは、豚そのもの。
──汚れた服を着て、手にボロボロの剣を持った、豚人間。
それが、ファンタジーにはおなじみのモンスター、オークだってことはわかるけど……
ラーサがオークからあたしを隠すように立って、
「何か用か?」
「お前……用……ない」
喋った。やっと声を出してるって感じだけど。
「用ある……その娘」
「ミオリ、きみの知り合いか?」
ラーサの問いに、あたしはおもいっきり頭をふった。
「娘渡せ。そうすれば、オマエ、見逃す」
「悪いが、断る」
「オマエ、後悔する」
「後悔?」
「魔王様の命令」
「なに?!」
なるほど、早速お出ましってワケね。
「魔王がミオリを狙っているというのか?!」「その娘殺す。褒美もらえる。それだけ」
「そんなこと、させるか!」
ラーサが腰の剣を抜いた。
「邪魔する、オマエも殺す」
ボロボロの剣を振り上げるオーク。
そして、金属のぶつかり合う音が耳を打ち、一瞬、心臓が跳ね上がった。
さて、あたしはどうしよう……
オーク相手に苦戦するほど、ラーサは弱くないけど……
一応、あたしは女剣士って設定にするから、ここで加勢して、一緒に旅をしても大丈夫ってトコを見せておいた方が──あ、でも、よく考えたら、剣を持ってなかった……
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