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『私、嫌なんだよね。泣くっていう行為が』
学校からの帰り道。
夕日を背に、茜が言った。
『? なんで?』
『だってさ、泣いて何になるの? 私なら、泣いてる暇があるなら前に進むよう努力するね』
――いつもの、あの美しく強かな瞳で、茜は自信満々に言い放つ。
夕日を浴びて輝く癖の無い艶やかな髪が、そんな茜の真っ直ぐな性格を忠実に表しているようだった。
私は思わず茜の美しさに見惚れて、しばらくそんな茜の姿を瞬きもしないで見つめていた。
……ちょうど目が渇いてきた頃、茜は私の方をじっと見つめて、にんまりと笑った。
そして、優しい口調で言う。
『まあこれは理想論だけどね。やっぱり、どんな時でも強くいたいじゃん?』
『茜は……十分強いよ』
そして、二人で笑い合った……
――思わず涙が零れそうになるのを必死で堪える。
まずいな。
茜との思い出を思い出すと、感情のコントロールがきかなくなる。
……そうだよ。
私は、前に進まなきゃ。
例え進めなくても、進む努力をしなくちゃ。
こんなんじゃ、茜に逢わせる顔が無い。
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