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私は瞳を閉じる。
そして幾度となく茜の顔を思い浮かべた。
風になびく栗色の髪。
小さめで上品な鼻と口。
無駄の無い綺麗な輪郭。
清潔感漂う白い肌。
そして意志の強そうな瞳。
どこか正義感を感じるような、美しい眼差しだった。
そして何よりも、私は茜の笑顔が大好きだった。
普段は少しつり上がりぎみな瞳をとろんとたれ目にさせて、屈託なく笑うあの顔が、私は大好きだった。
「……朱里? どうしたの?」
「……え?」
急に声をかけられて、私はほんの少し跳ね上がる。
「なんかぼーっとしてたけど……大丈夫?」
「あ、う、うん! だいじょぶだよ」
「……そう?」
優子はそう言うと、前を向いて歩き出した。
あまり深く問いただす気は無いのだろう。
友人の通夜で、悲しくない人なんていない。
優子は本当に、ただ私のことを心配して今も声をかけてくれたのだろう。
私は優子の優しさを再確認すると、黙って優子の後ろを歩き出した。
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