720人が本棚に入れています
本棚に追加
「しゅ、しゅきでしたっっっ!!」
………………
…………
……ありえない。かんだ。一番大事なとこを。
「……へ?」
当然田川くんは呆気にとられてぽかんとしてる。
あ、穴があったら入りたい。っていうかもう、消えたい。
「その……好き、なんです、はい」
情けないことにもう一回言い直したものの、すっかり意気消沈。
昨日さんざん鏡に向かって練習したのに。
「すきすきすきすきすきすきすきすきすきすきす……キス!?」とか一人で赤面してたのに。
何なんだ私。
「好きって……桜井が俺を?」
本当に驚いている顔で、田川くんは目をぱちくりさせている。
恥ずかしすぎ……逃げたい……。でもまだダメだ、結果聞いてないし。
私はこくんと、頷いた。
「ぷっ」
ん?「ぷっ」?口からおなら……じゃないか。
突然田川くんが吹き出した。
「ははははっ、マジかよ!お前さ、鏡見たことあんの?」
……え?
彼の言っていることが、すぐにはわからなかった。
歪んだ顔で笑いながら田川くんはさも可笑しいというように、私を見下ろしている。
鏡なら嫌というほど昨日見ましたけど。
そんなこと言えるわけもなく。
「ありえないっつーかさぁ……ブスに告られても嬉しくねーし」
私をあざ笑う田川くんの口元は、憎らしい笑みを浮かべていた。
.
最初のコメントを投稿しよう!