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知らない。
私はこんな彼を、知らない。
誰にでも優しくて、人気者で。
でも今は正反対な田川くん。
なんだろう……頭の奥で、ガラガラと音を立てて彼の輝く姿が崩れていった。
知ってしまったんだ私は。彼の本性を。
アイドルの仮面を剥がせば、出てきたのは最低な男だった。なんなのこのオチ。
わかってるよ、あんたに言われなくたって私がブスだってこと。
でもさ、もうちょっと言い方ってもんがあるんじゃない?
「ちょっとやだぁ、マジウケるんだけど~!!」
茫然と立ち尽くす私の耳に、田川くんではない誰かの甲高い笑い声が届いた。
女の子の声だった。
屋上には私と田川くんだけで、他には誰もいないはずなのに。
ああ、私、あまりのショックに幻聴まで聞こえてるんだ……。末期だな。
なんて落ち込んでいると、屋上の出っ張り……つまり校舎と屋上を繋ぐドアを囲ったコンクリート、四角形にかたどられたそこに誰かが隠れていたらしい。
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