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ドアの向こうに消えていった二人の後ろ姿が、ぼやけていた。涙が私の目に膜を張る。
失恋も失恋、大失恋だよ。
吹き抜けていく風が、私の真っ黒な髪を揺らす。なんだか、虚しかった。
もう……帰ろう。小春も待ってるだろうし。何て言おうかな……。
「やっべ、俺すげえもん見ちまったか」
とぼとぼと歩き出した私の足を止めさせたのは――
突然頭の上から降ってきた、男の楽しそうな声。
数秒考え込んでしまったものの、私はそっちに顔を上げた。
「ずいぶんひでえフラれ方したな、おねーさん!どうだ今の気分は」
どうやら屋上にいたのは三人だけではなかったらしい。
出っ張りの上から顔を覗かせて、ニヤニヤしているこの男。
髪の毛が……み、緑だ!!
初めて見た、緑色の髪してる人。
っていうか……いつからいたの!?
「ちょっと待ってろ」
そう言うと、緑頭は出っ張りの上から飛び降りて私に近づいてきた。
ダラしなく腰で穿かれたズボン。耳には沢山のピアス。はだけた胸元。こんなにも制服を着崩せるのもある意味すごい。
無造作にワックスで立てられた鮮やかな緑の髪の毛。
顔は……意外にも整ってた。キレイな二重の目も高い鼻筋も涼しげな口元も、私にはないものだ。紛れもなくイケメンだった。
それに身長もけっこう高くって、180はあるんじゃないかと思った。
「の、覗いてたの?」
「あ?俺はおねーさん達が来る前から、ずっとここにいたっての」
「は、はぁ……」
ということはですね、一部始終見られてたってことですよね!!?
人生最悪の日だ。くそっ、占い当たってないし!!
もーやだ……。神様はどこまで意地悪なんだろう。
あんな風にフラれて、なおかつ見知らぬ人にまで見られてたなんて!
「ま~、今どき珍しいわなぁ。髪は真っ黒、スカートも長ェし。色気ゼロだしなぁ。顔は……さっきの野郎が言うほどブスじゃねえよ、気にすんな」
私の足から頭のてっぺんまで観察すると、ぎゃははと下品に笑う緑頭。
すっごいムカつく。
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