魔法の書物

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その翼の色も黒かった。 黒い翼? これはなんだ? 悪魔か何かなのか? 僕がそんなことを考えていると、その人が動き始めた。 下に向いていた顔をこちらをこちらに向けた。 顔は幼い少女のようなものだった。 日本人よりは、欧米の方の人に似た顔立ちをしていたが、瞳の色は黒かった。 その少女は浮かんでいる状態のまま立ち上がり、こちらを見て口を開く。 「お前が所有者か?」 突然の質問に僕が固まっていると 「お前がこの本の所有者かと聞いているんだ」 と強い口調で言われてしまった。 「多分、そうだと思う」 こんなわけのわからない小さな少女に、圧倒されてしまっている自分を情けなく思うが、状況が状況なので、仕方ないことだろう。 「そうか。お前がねぇ」 と言いながら、パタパタと羽を羽ばたかせ、本の方へ飛んでゆく。 そしてその少女はその本の最初の一ページを開き 「お前の名前は…、佐久間真司か」 とそのページを見ていった。
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