お薬の時間

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皆さんいかがお過ごしでしょうか? 俺はとても不機嫌です。 何故かって? 想像してみな。 朝目が覚めたらそこは縦に起こされた手術台の上で、大の字で手足と首がしっかり枷で固定されて張り付け状態のこの状況を。 あぁ…なんか張り付けになったキリストの気持ちが少しわかった気がする… そんなことはどうでもいいや。 とりあえずこの窮地を脱するために、目の前の白衣を着た女性の背中に声をかけた。 「母さん」 「なぁに♪」 まだ25歳と言っても納得できるほど若く見える我が家の問題児、姫神家の母、栄子(えいこ)は溢れんばかりの笑顔で振り向いた。 やめい。 今にもにゃぱー、と言う効果音が聞こえてきそうな笑顔をしてこっちを向くな。 「何で俺は手術台に張り付けられてんのかな?」 冷ややかな笑顔で聞いてみる。 「それはねぇ、新薬を秋ちゃんに試してめらうためよ」 やっぱりか。 だと思ったよ。 俺を張り付けにする理由なんて十中八九これだ。 「じゃあ何故新薬のために俺を張り付けにするのかな?」 やっぱり冷ややかな笑顔は絶やさない。 「だって、秋ちゃん新薬試そうとすると逃げるんだもん…」 そこ、上目遣いで泣きそうになるな。反応に困るだろ。
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