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(・・まただ。)
家に帰ると必ずすること。
それは、春馬が出た番組のチェック。
今日は、映画"恋空"のスペシャル。
新垣結衣さんと並んで歩く春馬を見ると無性に胸が痛くなる。
それに、二人はお似合いで、
男の俺に春馬はもったいない。そんな風に無意識に自己嫌悪に駆られる。
――pipipi
ふと、鳴り響いた携帯の液晶には春馬の名前が並んでいて一瞬、出るのに戸惑った。
「…もしもし?」
「あー、雄也、恋空見たー?」
「っ、うん」
「ふは、やっぱりっ!
泣いてんだろー?」
(なんで、分かるんだよ…)
ちげーよ、と悪態つけばまた小さく笑ってちょっと待ってろと言われて切られた。
ノイズが鳴る携帯電話を座り込んだソファに投げれば跳ね返り床に音を発てて落ちた。
小さく吐いた溜め息が嗚咽に変わる瞬間、生暖かいものに包まれた。
「たくっ、一人で泣くなよ…」
「ふぅっ…、まだ、泣いてないしっ!」
泣くのを我慢して目の前にある服にしがみつけば安心してこぼれ落ちてくる涙がどんどん、服に染みをつくった。
「泣き虫ーっ、」
「うっ、さい!」
埋めていた顔をあげると意外にも二人の距離は近くて顔を逸らそうとすると髪に指を絡められた。
見つめ合ってしまえばもう、春馬のペースに流されて唇を重ねられた。
「んっ、ふ、」
「雄也、口開けろ」
「はっ、ぅんっ、」
薄く開いた唇から入り込んできた舌に必死に合わせる事だけで頭がいっぱいで、映画の事が全部忘れられた。
(…まただ。)
ちくんっ、とまた痛む胸。
春馬と唇を重ねるたびに、
春馬と身体を重ねるたびに、
いつかは、春馬が俺から離れて行くんじゃないかって考えてしまう。
「はあっ、雄也?
なに考えてんだよ?」
「ふあ・・あっ、べっつに…」
俺の身体を愛撫してる手を振り払い春馬の首に両手を回して抱き着いた。
恋人同士の俺達。
だけど、男って事もあって
見つめ合い、唇を重ねただけで自身は熱をもって盛りのついた犬のようにお互いを貪る。
そんな関係は実際、俺は嫌い。
だから、胸がちくん、と痛む。
「ごめっ、今日は・・
そんな気分じゃないから―――」
「…そっか。」
そんな、残念そう顔すんなよ。俺は、春馬から離れないように必死なんだよ。
いつかは、お互い離れなければならない。
「…俺の事、好き?」
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