たかあり

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静まり返る、ホテルの一室。 俺の目の前に立つのは、今日の獲物。 「お前…だれ?」 「生き血も滴るイイ男。」 わざと、長く尖った犬歯を見せびらかすように、舌なめずりをする。 この地域の俺の名前。 その名の通り、女の生き血を吸う吸血鬼。 「っ、俺…男だぞ?」 「お前は、特別。」 あぁ、お前は特別。 男の血なんて、好き好んで吸うわけがない。 「踊りませんか?セニョリータ」 今日、俺は、男のお前に 目を惹かれた。 腰に回した手は、拒否される事がなく、俺とコイツの距離は縮まった。 「あっ、うわっ!」 月の光が差し込む小さな部屋の中で、鼻歌を歌いながらステップを踏む。 リードするのは、もちろん俺。 俺に振り回されるコイツは、戸惑いながらついてくる。 月に照らされ青白く光る首筋に誓いのキスを…。 「ひっ、」 でも、なぜだろう 怯えるコイツに胸の奥がドコか、こんなに痛むのは…。 唇が触れそうな距離で囁く言葉は、 「テ・アモーレ」 「っ、え?」 「また、来るわ。」 ぱっ、と密着した身体を離せば痛む胸を抑え、部屋を飛び出した。 俺は、モンスター。 生き血を、全て吸い尽くす怪物。 いつか、俺は、アイツを傷つけてしまう。 俺は、君を思う度、 血の涙を流すんだ。 叶わない恋ならば いっそ壊してしまえと 願ってしまうのは いけない事でしょうか? 「また、来たのかよ…。」 また怯えた顔をする君。 俺の理性がなくなるまで、せめて朝まで、一緒にいてくれ。 「お話を、しませんか?セニョリータ」 「…は?」 「貴方の事を知りたい。」 本当は、最後に君を抱きしめたかたった。 そんな事をすれば、理性を無くして、生き血を吸うだろう。 抱きしめたい、抱きしめられない。 壊してしまいそうだから。 話をしていくうち、打ち解けあう二人。 「っ、ごほごほ!」 「お、おい!大丈夫か?」 変わりゆくこの身体。 血を吸っいない身体は、朽ち果ていく。 心配して、近寄って来る君。 (逃げて…。) 「来るなっ!」 俺の怒鳴り声に驚く君。 そして、悲しそうに顔を歪める君。 そんな君に伸ばした手。 でも、途中で引っ込めた。 「また、な?」 「…もう、来なくていい。」 君からの一言。 きつく胸を締め付け、軋み痛む身体より、胸の方が痛く感じた。 _
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