第一章

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精一杯の伸びをして、壁に掛けてあった制服を手にとる。 今までと違う制服か。 少し緊張するな……。 今日は高校の始業式なのだ。 俺は制服に着替え、一階に下りる。 一階には既に制服に着替えてパンを食べている夏美の姿。 「あっ……。」 俺に気付いてこちらを見た瞬間、少し驚いた。 「今日から高校生なんだもんね。同じ高校の制服着てたからびっくりしちゃった。」 そう、今日から俺は夏美の通っている高校に通う。 偏差値はまぁまぁ高め。 バカの俺からしたら、まぁまぁなんてものじゃないがな。 中3になってから必死に勉強して、合格した。 多分あれほどの本気は一生で1、2回しか出せないだろう……。 「今でも不思議。あれだけ勉強嫌いだったシュウが『家から近い』ってだけでウチの高校狙うなんてね。」 少しいたずらっぽく笑う夏美。 「家から15分だし。」 俺は短い返事をする。 でも、この理由は嘘。 .
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