告白した夜

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「……ピアノがね、怖いの」 ただ20分も宛もなく走り続けて、葵はようやく口を開いた。 「…怖い?」 「そう…。ピアノの音を聞くとね、泉を思い出すの。 泉がピアノを褒めてくれたから頑張ってきた。 泉の笑顔の為に指が腱鞘炎になっても弾き続けた。 それは何だったんだろうって…。 私には、私なんてないんじゃないかなって……」 葵は、最後には泣き出してしまった。 俺は行き先をナビに入れ、来た道をUターンした。 それから左に逸れ、ちょっと山道に差し掛かったところで車を止めた。 「……ここは?」 葵が心配そうに辺りを見渡すのも無理はない。 ここは民家も近くにない山道なのだから。 「いいから来いよ」 それから車を寄せた車道からは見えない展望台に、葵を招いた。 「わぁ……」 目の前の景色に、葵は頬を緩めた。 ここは都心から30分程度で来れる展望台。 ただし商業系の店が全くないから、あまり人に知られてない。 俺のちょっとした隠れ家だ。 それを誇大して葵に話すと 「隠れ家って…咲良は見た目も男として成長してないけど、中身も子供なのね」 …この女は、俺が男としてコンプレックスを持っている身長まで嘲笑って俺を貶した。 「…………そうだよ。俺は成長なんかしてない。俺はお前をいじめ始めた幼稚園の頃から、お前が好きだった」 俺は、俺を人生で一番貶した女を、抱きしめた。 「え!?なっ……何言ってるの!?」
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