告白した夜

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「俺は葵が好きだった。 失恋したぐらいで『自分って何なんだろうって…』自分すら見失うようなお前が好きだ。 好きな男の為に身を粉にするお前も 好きな男の為に無理して笑うお前も 一人でしか泣けない気取り屋なお前も 俺に恋人が出来て、心底祝ってくれたお前も 全部全部好きなんだ!! お前は自分のいい所なんか全然知らない! そりゃそうだろ、お前は兄貴しか見てなかったんだからな! でも俺は見てた!! 兄貴しか見てないお前をずっと……ずっと見てた… いじめて、どう接していいか分からないまま年齢だけ重ねて… 俺はこんな関係が嫌で堪らなかった。 だけど俺は待っていたよ。お前が泉に告白するのを。 だって俺が好きになった時、葵はすでに兄貴が好きだったもんな。 俺は順番守ったよ。 たとえお前らが付き合っても、俺は大好きなお前が笑うならそれでいいと思ってた。けど今は違う! 兄貴がいないからピアノを続けない? これからの人生どうすればいいか分からない? なあ、それって違わないか? お前の人生何なんだよ。 お前いい所沢山あるじゃねーか。 それを、どうして…気付かないんだよ………」 俺はいつの間にかぐちゃぐちゃに泣いていた。 葵も困惑したように俺を見つめていた。 そりゃそうだろな。 俺だって、こんな告白初めてだよ。 今まで葵の気を惹く為に散々女と付き合ったけど、女が泣いても俺は泣いた事なんかない。 女を泣かせても俺が泣かされた事はない。 女を感じさせても、俺が感じた事はない。 俺の中の女は、葵だけだ……。 だからどうか、気付いて欲しい。自分の魅力に。 そしてちょっとでいいから、俺を男だと思ってくれたら嬉しい。 俺は祈るような気持ちで、葵の言葉を待っていた。
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