ロック

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一週間後。 俺は葵に誘われてジャズ喫茶に来ていた。 「つか俺車なのに…。俺は足かよ」 「そーよ。ご愁傷様ね」 そう言って口にしたバーボンに、葵は噎せた。 なんで飲めない癖にバーボンなんか頼むのだろう…。 「ゲホッゲホッ…あ、ねぇ、近くにライブハウスがあるの知ってた?」 「ライブハウス?」 「そう!今日はそこでインディーズのバンドがライブするんだって!行こうよ!」 俺の拒否権は無しに、俺達はジャズ喫茶から出ていた。 「つかライブハウスにその格好はないだろ」 俺は葵の洋服を指差した。 白のフリルをあしらったブラウスに小花柄のシフォンスカート。 “これから青山でお茶ですの”のような出で立ちだ。 「そ…そうかな?」 「ああ…。本当にライブ行くなら服見に行くか」 俺は近くの老舗デパートで、そんなに品が悪くなく若い女性向けのセレクトショップに葵を連れていった。 「今からライブ行くから、見繕ってやって」 俺は店員に葵を任せ、試着室前のソファーにかけて煙草に火を着けた。 数分後、試着室から出てきた葵は小花柄のシフォンワンピースに白のパフスリーブのTシャツを着ていた。 文にするとさっきとたいして変わらないようになるが、太めのベルトでウエストマークし、更にスカート丈はさっきより10cmは上だ。 葵の雰囲気を壊さず、ここまで夜遊び向けなイメージに近づけてくれた事に感心し 「このまま連れて帰ります」 そう言って、店員が手にしたトレイにカードを乗せた。 「ちょっ…いいよ!これぐらい私が払うから!」 鞄を取ろうと試着室に戻ろうとした葵の腕を、俺は会計が終わるまで離さなかった。 葵も葵で、これ以上は恥だと思ったのか抵抗もしなかったけど。 車に戻った葵は、助手席にふんぞり返った。 「これぐらいも払えないような女だと思ってるの!?」 「てか、デートで金払わせた事ないぞ」 「デート!?」 葵が固まってしまった。 「…まさかこれデートじゃないとか思ってた?」 「思ってた…」 二人で同時にため息を吐いた。
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