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初めて、ずっと好きだった葵とデート出来たのに
それを認識して貰えてないとは…さすがにヘコむ。
「…私、初デートは好きな人とって決めてたのに…」
葵が珍しく小声で可愛らしく呟いた。
「……つーか、葵の本性がこれだって分かったら、兄貴なら引くよ」
「なんで今そんな事言うのよ!!」
さっきの控え目な姿は一瞬で消え失せ、葵は噛みつかんばかりに俺を睨んだ。
本当俺、なんでこんな奴好きになったんだろう……
そう思って記憶を手繰っても、一番古い幼稚園の記憶からすでに俺は葵が好きだった。
好きになってしまえば、どんな性格だろうと可愛いと思えてしまう。
ああ成る程。“恋は病”。良く言ったものだ。
確かにこんな女、病気でもなきゃ好きにならないだろ。
ずっと俺の兄貴ばかり見てた女。
恋しい兄貴の為に医学部まで追っかけていった女。
恋しい兄貴の為にプロのピアニストにまでなった女。
一人でしか泣けない女。
俺が葵を嫉妬させようと女と付き合った時に「良かったね」と思いきり笑った女……
…ああ、思い出しても切りがない。
俺はライブハウスに向かってハンドルを切っていた。
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