壱夜 「過ぎた力」

3/4
前へ
/208ページ
次へ
 ん……? 「出てこい」 「……何時から気がついていたのかしら?」 「さぁな、気がついたら分かってた」  何処からか……いや、確かに上空から聞こえてくる声に躊躇せずに少年は話す。 「いい加減出てきてくれ」 「そうね」  この会話に痺れを切らした少年はそう言うと、その声は素直に従った。  それから少年の立つ場所が影に覆われた。 「初めまして」  そこには空に浮かぶ女性。  それから女性は少年の位置まで降りてくる。 「……おや、これはとても麗しい女性で」 「あらお世辞でも嬉しい事を言ってくれるじゃない」 「あぁ、バレてしまいましたか」  その女性を見た少年は一瞬にして態度が豹変する。 「でも、貴方のその態度は嫌いじゃないわ」  その女性も少年の豹変を気にしたりはしない。 「…勿体なき御言葉、大変光栄です」  その少年の豹変は相手が女性ではなく、自らより力有るものに対する態度だ。
/208ページ

最初のコメントを投稿しよう!

582人が本棚に入れています
本棚に追加