19529人が本棚に入れています
本棚に追加
/433ページ
そうニヤリとした表情を浮かべながら、奴は奥の扉に意味ありげな視線を送る。
今すぐにでもかけだしていきたいが、あいにくここにいる二人がそうはさせてくれないだろう。
それに、あの扉の奥からはとても不気味な気配がする。まさか目の前の強力な二人をもしのぐほどの何かがいるのか?
だとしたら不味いな……。
「……おまえら、このまま何処かへ消えてくれないか? そうしてくれたなら、俺たちは手を出さないし、王女様を誘拐した罪も不問にしてやる」
意味がないとわかっていながらも、お決まりのような台詞を口にする。
正直、この二人と戦うことですら手一杯だと思うのに、その上何か居たらさらに厳しい状況に陥ってしまうだろう。
「おいおい、それはジョークか何かかい? 状況は私たちの方が遙かに有利なんだ。君は交渉できる立場ではないだろう? その立場にあるのは我々だ。そして君達を見逃す理由はない」
嘲るような口ぶりで、されどもどこか神秘的な空気で、そして狂気に血走った目で叫んだ。
「さあ、息絶えろ! 冥界の勇者よ」
最初のコメントを投稿しよう!