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「…好きな奴が、」
「ぅわっ!?
ちょ、近、睫毛ながっ」
「好きな奴が傷ついてるのを見て喜ぶような人間はどうかと俺は思うが」
「へ?」
真剣モードの表情と声色。
さっきまでのおふざけモードとは明らかに違うそれらと言葉に、すぐには脳がついていかなかった。
数回その言葉を反芻して。
脳が活動したと同時に、俺は思わず吹き出してしまった。
「…ふっ」
「あ?」
「ク、クサい…会長マジクサい…!」
鼻を摘んでクサいクサいと連発したら、信じられないほどの殺気を出してきたから、とりあえずからかうのは終わり。
本当は、分かってる。
さっきのは会長なりに慰めてくれたんだろうってことぐらい。
だから、笑いながらも一応礼は言って。
からかったのを根に持っているのだろう、眉間に皺を寄せてはいるが、まんざらでも無さそうな顔を浮かべた。
「お前には笑っててほしい」
「相変わらずクサいけど、やっぱり変な人ですよね会長」
「惚れたか?」
「今の言葉のどこが褒め言葉に聞こえたのか問いただしたい」
「今はツンデレなるものが流行ってるらしいからな」
「ポジティブシンキング!!
しかもツンデレ流行ったのって少し前な気が」
数年前に、カルタみたいなものを波夏に見せられた記憶がある。
危うくあの恥ずかしい読み札たちを音読させられそうになったから、もう男なんて捨てて必死に頼みこんだんだった。
俺の指摘に、会長はそうだったか?と首を捻ったがそのうちどうでもよくなったようで、そろそろ戻るぞと言ってきた。
「俺様は生徒会室に戻るからお前も…」
「マイスウィートホームが俺の帰りを待ちわびてるんで」
「マイスウィート寮だろう」
「いやそう言いたいならマイスウィートルームが良い気が……会長、ネーミングセンスないんですね」
「なん…」
「あ、じゃあ俺帰りまーす」
逃げるが勝ち。
そんな言葉を頭に浮かべながら、俺は会長を残してその場をあとにした。
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