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俺の言葉の続きが気になるのか、どことなく落ち着かない様子の会長は、それでも「早く出ろ」と言ってきた。
きっと修平だろうからあまり出たくはないが、仕方ない。
溜め息をつきながら着信ボタンを押した。
「今度は何の用だよ」
『失礼ね、久しぶりに電話するのに』
「…波夏？」
てっきり修平のハイテンションな声が返ってくると思って疑わなかった俺の耳に入ってきた声は波夏ものだった。
驚いた。
ディスプレイに表示された名前を確認しなかった俺が悪いと言えばそれまでなのだが。
「ごめん、修平だと思って」
『ああ、相変わらず仲良さげで何よりだわ。
うん、萌える』
「お前も相変わらずの腐り具合で何よりだ」
『ありがとう。
それでね、最近あんたから萌え話聞いてないじゃない？』
「萌えさせてるつもりはないんだけどな」
『だから話聞きに行こうと思って、今校門の前にいるんだけどね』
「ああ、そうな―――え？」
今、こいつ、なんて言った？
「…ごめん、ちょっと耳悪くなったみたいだ俺」
『今、校門の前にいるから迎えにきて☆』
「………ああ、お前の学校の？」
『あんたの学校に決まってんでしょ』
…嘘だろおい。
額に手を当てて考えこむ。
正直今、波夏に会う気にはなれなかった。
「…どうした」
眉をひそめる会長に苦笑いを返すと、不満そうな顔をした後、あとで問い詰めるからなと無言の圧力をかけられた。
『あっ、すいませーん！』
「は？」
不意に声を上げたのは電話先の波夏。
『いやあんたじゃなくて。
あの、そこの人！』
『ん？オレ？』
「…神様、呪うぜ」
波夏に返した声には嫌ってぐらい聞き覚えがあって。
即座に通話を切る。
「すいません会長、失礼しましたっ！」
「は？ちょ、おい、颯人！」
会長には悪いが俺は今、走らなくてはいけない。
走れ颯人。メロスに負けるな。
波夏とあいつだけは出会わせてはいけないと直感が告げているのだ。
「堺ィィィィィィィィイ！！」
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