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波夏はちらりと視線を寄越し、それから鞄から1つの茶封筒を取り出した。
厚みがあるわけでもない、何の変哲もない茶封筒。
「たぶん、手紙だとは思うけど」
「ん、さんきゅー」
受け取りたくなんてなかったが、とりあえず波夏の手からそれを受け取る。
心なしか心配そうな目を向けてくる波夏に笑顔を返し「後で読んでおく」と伝えれば、波夏も「わかった」と微笑みを返してくれた。
「にしても想像以上にすごい学校ねぇ…まさに王道!」
腐女子復活。
面倒ではあるが、まぁあのまま暗い雰囲気が続くのも嫌だしいいか。
「お前…外観も見たことない学校に俺を編入させたのか…!」
「男子校、全寮制。
それだけ情報があれば十分だよね、腐女子としては」
「俺としては不十分すぎるけどな」
お陰で大変な目に合ってるんだぞと軽く睨み付けるが、それを物ともせずに波夏はペラペラと語り始めてしまった。
「いい?王道っていうのはね―――」
こうなるともう俺の手には負えない。
諦めて、波夏の話を聞き流すことにした。
波夏が語り出してから何分が経ったのかは分からないが、そろそろストップかけないとなぁとげんなりする。
さて、どうやって止めようか。と必死に考えているところに。
「…颯人」
「え」
救世主…!?
抜群のタイミングで呼び掛けてくれた声に感激しながら、後ろを振り向いて。
「…え」
「俺様から逃げられるとでも思ったか?」
「いや、別に逃げてません。
逃げたい気持ちには溢れてるけど」
「びっ…………」
ん?
波夏が変な声を上げた。
「美形…!!超絶美形きたこれ…!!
しかも俺様………つ、ま、り!!」
「…え、なに」
「ずばり!生徒会長様でしょう!」
「…そうだが」
「きゃーっ!
やっぱり!やっぱり!
颯人を早く落としてくださいねっ、むしろ早く掘っちゃってください!」
「ああ、そのつも…」
「何さらっと問題発言しようとしてるんですかバ会長」
相変わらず発言が血迷っているが、まぁ何はともあれ、会長の登場のおかげで波夏の萌え語りを止めることが出来た訳である。
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