第05章

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授業免除。外出解禁。 なんて甘美な響きだ。 俺はこの前編入したばかりだし波夏とも会ったし、それほど外の空気が恋しいわけでもないが、それでもやっぱり俺はノーマルだから男子ばかりの空間にずっといるのは心地良いことではない。 …俺、ノーマルだから! 「去年までは中学だったから勝ち目ないようなものだったけど、今年こそ…  頑張るよ、颯人!」 「お、おう」 よく仕組みは分からないが、多くの人が楽しめるようなものをやればいいってことだろう。 だからこの時の俺は、お化け屋敷とかが人気なんだろうななんていう考えが甘いなんて、考えてもいなかった。 ***** 「じゃあ大体意見出たみたいなんで、この中から多数決とりたいと思いまーす」 「ちょーっと待ったぁぁぁぁあ」 現在HRの時間。 クラス参加の出し物を決めるべく、黒板には文字が散乱していた。 もう少し丁寧に書けという文句はさておき。 「?どうした神崎。まだ何かあるのか?」 「お前らのチョイスが理解不能なんだが」 「チョイス?…なんか変か?」 黒板を眺め首を捻る委員長とは何回か話したことがあるし、編入したての頃お世話になったりもして、その時はまともな印象を受けたのに。 なんだこの学園。これが普通だというのか。許さん。 「メイド喫茶、コスプレ喫茶、女装喫茶、妹喫茶、SM喫茶。  ……なんだそれ!」 「知らないのか?  まずメイド喫茶というのは、喫茶店の店員が…」 「説明は求めてません!」 そういうことを言いたいんじゃなくてだな! 頼むから真顔で説明しようとしないでくれ委員長。 「ああ、違うのか。じゃあどうした?」 「委員長、ここ男子校」 「?知ってるけど」 「メイド喫茶の店員は女性」 「街にあるメイド喫茶はそうだな」 「…委員長、ここ男子「さっき聞いた」 おかしい。実におかしい。 なぜこの流れで会話しても異常さに気付かないんだ委員長よ。 不安に思ってクラスを見れば、ほぼ全員が俺を不思議そうに見つめてきていた。 …俺を? 「…え、俺じゃなくね」 「まぁとりあえず神崎は放置安定で、多数決とりまーす」 「ちょ、委員長!?」 はーい、というクラス中の声により、俺の異議申し立てはあえなく掻き消されてしまった。 .
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