第05章

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目に留まったのは一番上にある『陽坂』の文字。 思わず黒板とキョウの顔を見比べてしまった俺に、キョウの極上笑顔(ブラック仕様)が向けられた。 「僕が女装なんて見てられない…って?」 「違う違う違う!  むしろキョウなら似合いすぎて困るレベルにはなると思うし超見たいけど、裏方で牛耳るんだろうなとか勝手に想像してたからびっくりしただけでだな!」 「なっ…」 …ん? キョウが俯いて黙ってしまった。 あ、あれ…?俺なんかまずいこと言った…? 「キョ、キョウ…?」 「………い」 「え?」 「心臓に、悪いって言ったの!颯人のばか!ばかばか!」 「はい!?」 な、何の話だ。 ぽかんとしているとキョウは溜息をつき、まぁいいやと話を終わらせてしまった。 すごく気になるが、怒らせたわけではないみたいだから良しとするか。 そんなやり取りをしている間にクラス全員の役割が決まったようで。 ずらっと並んだ名前をぼーっと見ていると、不意に前の背中がぐるりと半回転した。 前の席、腐男子堺である。 「神崎、案ずるな」 「…ごめん堺、まったく話が見えない」 「これでオレ(腐男子)の平和は約束された、ありがとう」 「よく分かんないけど、俺の本能がこれ以上聞いちゃいけないと言ってる。  だから前向け、堺」 頭を両手で挟んで無理矢理前を向かせると、大好きだ神崎…!とかいう告白をされた。 「あ、もちろんlikeの意味!だからな!オレ、ノーマル!だから!」 「分かってるって」 なぜかあまりにも必死に補足説明を加えてくる堺に思わず笑ってしまう。 「かっ…」 「おい堺こら、なに顔逸らしてやがるこら」 なぜか物凄い勢いで顔を逸らした堺に俺のガラスの心は崩壊気味。 そういえば琉衣にも何回か「笑顔がひどい」みたいなこと言われてたんだった…そうか…そんなにひどいか…。 堺が何か早口で言う声もまともに耳に入ってこないままへこんでいると、いつも通り気だるさ全開な新坂が教室に入ってきて終礼が始まった。 …俺、笑顔の練習絶対するんだ。 .
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