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「……別れて」
目の前にドン、と置かれた写真。
辰もっさんが置いた写真を見て、おいらと朱くんは目を見開いた。
「これ、朱くんとリーダーだよね? 社長が何とか週刊誌に載るのは阻止したみたいだけど…もう、二度目は無いってさ」
その写真には、帽子を被った二人が駐車場でキスをしている光景がばっちり納められていた。
一人は、帽子が陰になって顔が見えないけど、もう一人は分かる。
これは、朱くんだ。
イコール、もう一人はおいら。
この帽子、おいらのお気に入りの帽子だし、ここの駐車場でキスした記憶もある。
「……いつのまに…」
「しゅーくん…」
写真を持って小さく震える朱くんの服の裾を縋るように掴む。
おいらたちは仕事は、ただでさえスクープなんてあったら大変なのに、男同士の恋愛なんて、どうなるか想像もできない。
多方面に迷惑をかけるなんて、そんな生ぬるいものでもないかもしれない。
いろんなことがぐるぐると頭を回り、おいらも震えが止まらない。
どうしよう、どうしよう。
「……だからさ、最初にも言ったけど…」
静かな部屋に、冷たい辰もっさんの声が響く。
いやだ、その先は聞きたくない。
お願い、言わないで。
おねがい――
「別れて」
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