【道】

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爽やかな風が頬を撫で、蒼天の暖かな陽射しを浴び大地に茂る草花は、葉を空に向かい仰ぐ。 誰もが清々しい気持ちになる穏やかな春の陽気とは裏腹に誇りっぽい野原の道を行く私の心は、どんよりとした重い曇り空に覆われていた。 歩く度に音を鳴らす私の全財産の切ない音が響く。   やはり詩を売るだけでの生計は厳しい。   人より秀た才能があるとは思ってはいない。 ただ文才の面を得意としていたことに加え、景色を眺めることが好きという誠に安易な考えで吟詠の道を選んだ。 しかし、決して吟詠の道を選んだ事を後悔していることは無い。
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