雨の香り

2/11
前へ
/38ページ
次へ
一夜明けた朝、秦は何食わぬ顔で学校へと向かった。 駅に向かうまでの道のり、通りかかった家電量販店の前に陳列されているテレビが今朝のニュースを伝えていた。 『――昨日の現場からほど近い場所での今回の殺人事件ですが、今までとは手口が違っており、犯人は刃渡り60㎝以上の鋭利な刃物を使用した可能性が――』 そのニュースを横目に秦は歩いた。 危機感などまるで無いというふうにニヤリと笑ってだ。 (誰も思わないさ犯人がナイフ一本で人間の首をハネたなんてね、それに殺した奴の仲間は皆覚醒剤を持ってる訳で、ソレを使ってるわけだし――) 「おはよう、緋月君」 家電量販店を後に、秦は不意に声を掛けられた。 良く聞く声に、声の主が同じクラスの女子だと理解出来た。 「おはよう、美奈希さん」 学校で、無愛想な訳では無いのだが、過去の事件の事やら、尾ひれの付いた噂から秦はクラスで1人孤立している。 しかしまあ、イジメや無視をされている訳ではない。 見た目も性格も他人から見てみれば‘普通’ 特に近寄ってくる人間がいないだけだ。 だが、そんな中でこの美奈希 結(みなき ゆい)だけは違った。 肩までの黒い髪、黒い瞳。 清楚な感じで整った可愛らしい顔立ちは学校でも人気らしい。 そんな少女が同じクラスになってからというもの何かと秦を気遣うのだ。 「今日も眠そうだね」 「ああ~、うん眠いね」
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加