雨の香り

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――放課後―― 秦と結は街に向かった。日が傾き、橙色に染まる街並みを並んで歩く2人がある店の前を通り掛かる。 子犬の鳴き声がガラス越しに響いていた。 お洒落なペットショップだった。 結がガラス越しにショウケースに入れられた子犬や子猫を眺めていた。 「この子可愛いね」 と、結の様子を少し離れた位置で眺めていた秦に、結がショウケースから振り向いて声を掛けた。 「どの子の事?」 とショウケースに近づいていく秦。 すると、子犬や子猫達が何かに怯えるように体を丸めてしまった。 「どうも僕は動物には嫌われるみたいだ」 少し寂しそうに呟く秦に結は首を振った。 「そんな訳無いよ、丁度皆寝る時間なんだよ」 微笑んで結はそう言ったが、秦にはそう思えなかった。 先程まで尻尾を振って愛嬌を振りまいていた子犬達が身を縮め、ショウケースの隅に逃げた。 子犬達が秦を見る目、それは完全に恐怖の色に染まっている。 動物の勘が秦を危険な物だと感知したのかもしれない。 「さ、次行こう緋月君」 「ああ、うん……そうだね」
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