緋色の月

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嫌な夢を見た、父親が黒いロングコートを着た男に殺される夢だ。 「ああ……まだこの夢を見るのか」 じっとりかいた汗でシャツがベタついていた。 まだ幼い、いくつ位だろう。 僕が10になった頃だったろうか、屋敷に押し入ったコートを着た男は突然道場で鍛錬をしていた父を襲った。 厳しかった父親。 でも時折見せてくれる笑顔と頭を撫でてくれる暖かい手が大好きだった。 それをあのコートの男が奪った。 僕は父を殺したソイツが許せなかった。 当然復讐したさ、先刻まで使っていたナイフを男に刺した。 それは覚えてる、でも男は死ななかった。 闇雲にだったけど確実に心臓を捕らえてた。 今思えばアレは刺させていたんだろうね、あの男は。 男にやったように僕も胸の辺りを刺された。 そして男が僕の眼前に手を掲げると、両目に激痛がハシッて何も見えなくなった。 意識が遠のく僕に聞こえたのは男か女分からないノイズがかったような気味の悪い声だった。 【私が憎いか、ならば私を殺してみせろ】 気がついたら近くの病院の一室だった。 アレから7年たつ。 僕は今でもアイツを探している。
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