動き出す歯車

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車に乗り込もうとした秦の視界に映ったのは、反対車線側の歩道に立つ黒いフードコートを被った人間だった。 傘も差さずにソレは佇んでいた。 フードを目深に被っていて顔は見えなかったが、顎の骨格から秦にはソレが男だと理解出来た。 その男が不意に右手を突き出し、人差し指でコッチへ来いとでも言うように合図を送ると、路地裏へと消えていった 秦は走った。 父親を殺した奴の唯一の手掛かり、黒いコート。 アレが犯人かは分からないが、確かにあの男は秦を呼んだ。 秦の胸中は歓喜に満ちていた。 犯人であろうと無かろうと、何かが動き出したと感じたのだ。
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