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日の落ちた暗い夜。
更には雨雲で月すら見えない。
しかし眠らない都会の光は、暗い路地裏にも差し込む。
ビルの防犯用のライトもあってか薄暗くはあっても、見えないと言うほど暗くはなかった。
人、2人が並んで幅いっぱい。
そんな路地裏でフードの男と秦は向き合った。
秦は学生ズボンの腰からナイフを抜く。
しかし構える訳でもなく、腕は下げたままだ。
そしてフードを被った男がフードを取り顔を晒した。
20代後半といったところか。
短髪、整った顔立ち、周囲を威嚇するようにつり上げられた目。
「緋月秦というのはお前だな」
「やっぱり、そう簡単には会えないか。
……そうです、追ってきたんですから、状況から考えてもそうでしょう?」
男の声と言葉に前半は聞き取れないような小声で、後半は聞こえるように返答する秦。
「モンスターだったか、"薬売り"の元締めから依頼を受けてな、これ以上客を殺されちゃ商売あがったりなんだとさ」
「元締めはどこにいるんですか?」
「ソレを聞いてどうする、ここで死ぬのによぉ」
男が腕を上げ、掌を秦に向けた。
それでも秦はナイフを構えず、腕は下げたままだ。
「俺は天宮流(あまみや ながれ)魔術師だ。俺の名、冥土の土産に持って行きな」
「冥土に行くのはアナタですよ。僕の目にはアナタがバラバラになって僕の足元に転がっているのが見えるんですから」
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