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秦は分かっていたハズだ、敵にはそう簡単に会えない、と。
しかして表れたのは魔術師を名乗る殺し屋。
魔術師はその存在を知られてはならない。
秦が、師と仰ぐ者に聞いた言葉だ。
「今日はおあつらえむきに雨だ、行くぜ」
流がかざした手に青い光が灯った。
それが文字を描き、紋様を流の手に刻んでいく。
するとだ、降り注ぐ雨が流の前で収束し、水の塊へと姿を変えた。
「行きな」
漂う水の塊が更に姿を変える。
鋭利な針、というよりは杭だ。
それが数本、秦目掛けて高速で迫った。
秦は迫る水の杭をナイフで捌く。
しかし、一度はナイフに切られてはじけた水の杭は、再び収束し杭の形を取り戻すと、再び秦を襲った。
「水が切れるわけないだろう、そんなチャチなナイフで勝てると思うなよ?」
「……仕方ない、この目は疲れるんだけどね」
迫る水の杭をもう一度ナイフで切っていく秦。
前方から迫る杭を縦に横に刻んでいく。
するとどうだろう。
水の杭は弾けることなく、霧状に変化し霧散したのだ。
「なんだ、何をした」
「殺したんですよ」
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