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どんなに鋭利な刃物でも液体は切れない。
仮に切れたとしても、ソレが無くなる事はない。
分かれて落ちて、地面に溜まる。
しかしだ、秦が切った水は分かれて落ちることはなく、霧散して消えた。
ソレが水の死かと問われれば私は"分からない"としか答えられない。
秦が殺したと言ったのは秦自身の認識であって、他人のそれとは違うだろう。
ある者から見ればその現象を"消えた"と言う者もいるだろうし"蒸発した"と答える者もいるだろう。
ただ、それを成した本人はその現象を"殺した"と表現した、ただそれだけだ。
「このナイフはちょっと特別なんですよ、先生が作ってくれたんですが、この目がね――」
そう言って秦は顔を上げた。
流はそんな秦の目に驚愕した。
日本人らしい黒い瞳はそこに無く。
あるのは紅と金に輝く眼。
「聞いてないぞ、こんな小僧が魔眼使いなんてよぉ」
「そう、魔眼。この目が発動してる時に限りこのナイフは全てのモノを殺せるんだそうです。世界のどこかには直死の魔眼なんてモノも有るそうですが…………僕にはこのナイフと、この眼があれば十分です」
秦がナイフを逆手に持ち替える。
構えはしない、ただゆっくりと流に向かって歩き始めた。
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