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学校での授業も終わり、帰路につく。
屋敷に帰った秦ではあったが、着替えもせずに、荷物だけ置くと再び都内へと向かって行った。
電車とバスを乗り継ぎ、やって来たのは昨日起きた殺人事件の現場である路地裏。
立ち入り禁止の黄色いテープ越しに現場を見ていた。
日が沈み、夜の闇が路地裏から光を奪っていく。
秦は黄色いテープを越え、路地裏を奧に進んでいった。
雑踏の音も走る車の音も遠くなる頃。
秦はガラの悪い男達に囲まれた。
「学生がこんな所でなぁにしてんのかなぁ?」
「もしかして財布でもプレゼントしてくれんの?」
男達は秦を囲んだまま笑った。
普通の高校生ならコレはカツアゲという非常事態だ。
しかし秦は特に誰を見るでもなく、前を向いて口を開いた。
「黒いコートを着た男を知りませんか?」
秦のその言葉に再び男達が声を挙げて笑った。
「なんだコイツ、迷子かよ」
「知らねえよそんな奴」
「そうですか、なら良いです」
アテが外れて残念と言わんばかりに肩を落として秦は踵を返した。
しかし、カツアゲ目的の男達が眼鏡を掛けた軟弱そうな高校生というカモを見逃す筈もない。
「おい待てよ、ちょっと遊んでいけ――!」
秦の肩を掴んだ男は、次の瞬間には秦の足元にひれ伏していた。
「ぎゃ!」
秦に投げられ、顔面を踏みつけられ秦の肩を掴んだ男は気を失った。
「何してんだテメェ!」
仲間をやられ逆上した仲間がこぞって秦に襲い掛かってくる。
そんな状況だったが秦の顔は不適な笑みを浮かべていた。
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