緋色の月

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幼い頃、命を落としかけ、視力を失った僕は眠り続けた。 これは母に聞いた話し。 僕は半年間眠り続けた、命は奇跡的にとりとめ、術後の経過も順調だったそうだが、それでも僕は目覚めなかった。 あの時、何か夢を見ていた気がする。 まあ覚えてないんだけど。 母が医者に言ったそうだ「傷が治ったなら後は自宅で療養する」って。 次目覚めた時は自宅の屋敷、自分の部屋。 そこからだった。 見えない筈の目に変な物が映った。 駆け寄る母や、お手伝いさん達。 その母に重なる灰色がかった母、お手伝いさん達に重なる灰色がかったお手伝いさん達。 その灰色の‘影’は絶えず母やお手伝いさん達の次に行う行動を行い、それに次いで色の付いた本物の母達が影がした動きを真似るようにそっくりそのまま動いていた。 しばらく眺めていたそんな光景の後にやって来たのは、子供にはコレといってない程の激しい頭痛。 また気を失った僕。 次に目を覚まして見たのは、知らない病院の一室の天井だった。 もう灰色の影は見えなかった。 しばらくして退院した僕。 父の葬式には出られなかった。 悲しくて、泣いていた。 屋敷の庭にある池の側、父と一緒に鯉に餌をあげた池の側で僕は泣いた。 水面に写った僕の顔に違和感を覚えたのはその時だ。 目の色が明らかに他人と違う物に変わっていった。 血のように赤い虹彩、金色の瞳。 怖くて、母達の居る部屋に駆け込んだのを覚えてる。 また灰色の‘影’が僕の目に写った。
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