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『イヤホン半分こ』
「ねぇ翔、さっきから何聴いてるの?」
椅子に座ってiPodを聴く俺に話し掛けてきたのは、天然が入ってる片想いの相手。
「………別に、なんだっていいだろ」
相変わらず照れてぶっきらぼうに答える。
「えー、そう言われたらますます気になるじゃん」
「音楽聴こえないからさ、あっち行ってくんない?」
「私の声、そんなに大きい?」
さっきから距離が近くて音楽よりお前に気がいくんだって。
とは言えず。
「とにかく、蘭七とか美羽のとこに行けばいいじゃん」
「何の曲か教えてくれるまで行かない」
変なところで頑固な奴。
「勝手にしろよ」とか言って再び音楽に集中しようとするけど、やっぱり隣が気になって。
「あーもう分かったよ。はい、聴けよ」
そう言ってイヤホンを外そうとする俺の手をおさえた。
「せっかく聴いてるから悪いよ。片方あれば十分だから」
俺の返事を聞かず、さっさと隣の椅子に座ってイヤホンを片方耳に入れた。
「いい歌だねっ、これ」
隣でニコッと笑った顔がやけに近くて。
我慢出来ず、机に突っ伏してしまったのである。
(野村翔×木島杏奈)
END
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