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『消しゴム半分こ』
「……あれ?」
「どうしたの、結実」
「いや、消しゴムがなくて………」
今は大事な会議中。
………なのに、持ってきた筆箱の中に消しゴムが入ってなかった。
「あー……昨日宿題やってたから、机に置いてきたかも」
今忘れたって言える雰囲気じゃないからなぁ……。
「はい」
隣から出されたのは、少し小さな消しゴム。
よく見ると、半分に割れていた。
「……えっ」
「なかったら困るでしょ」
「別に割らなくてもいいのに」とか「シャーペンに小さいの付いてるよ」とか言えず。
「ありがと」
とりあえず、その優しさに感謝した。
見た目は子どもっぽいくせに、やっぱり中身は私より大人なんだよなぁ……。
会議が終わって。
「これ、返そうか?」
「いらないよ」
最年長らしい笑顔を見せたとたん、急に手に持っていた消しゴムが輝いて見えた。
しばらくして、その笑顔の輝きに照らされてるのか、なんてよく分かんないことを思って。
「……えへへっ」
思わず変な笑い方をして。
(この消しゴムは、使わず筆箱の中にずっと入れておこう)
とか、思っちゃった訳です。
(上原陸×岡田結実)
END
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