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「………崚行?」
「やーかーらー、なに?」
恐る恐る声のする方を見ると、そこにはウチの大好きな笑顔で立っている崚行がいた。
「なんで……」
「あー、俺生きてないからな。寿々歌にどーしても言いたいことがあって、それが未練となって出てきた。やから、言ったらすぐにあっちへ行くわ」
止めて。
そんな笑顔で、別れの挨拶を言わないで。
「……別に言わんでいいから」
もしウチに伝えなかったら、君は幽霊でもずっとここにいるでしょう?
ウチの考えが分かったのか、崚行は真面目な顔をして言った。
「嫌や。俺は今言いたいねん」
「……ウチから離れたいん?」
「別にそういう訳じゃない。ってか、そのことで言いたいことがあるねん」
まるで告白してきた時みたいに顔を真っ赤にさせて、でもウチの目を見ながら言った。
「俺な……カッコ悪いけど、その、マンガみたいに『俺のことは忘れて新しい恋人見つけろ』とか言われへん」
「……知っとるよ」
「やけどな………
浮気相手なら、許せるから。やから………俺が側におらんでも、ずっと恋人のままでいてくれますか?」
感情を忘れていたのが嘘かのように、涙が止まらなくなった。
「当たり前やん………、崚行は、ずっとウチの恋人やでっ」
何度も何度もうなずくと、崚行はいつもの笑顔に戻った。
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