送信失敗

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「じゃあ、今回はこれでお開きということで!!」 稜駿の一言で、同窓会は終わった。 みんな、次々に帰って行く。 「ねぇ、翔」 振り替えると、そこには愛しい君がいた。 「どうした?」 あわてて笑顔を作る。 「うん。あのねー、メルアド教えてくれない?披露宴上げる時に、お知らせしないと困るから」 「あ、うん」 すぐに俺はケータイを取り出す。 もし、10年前に教えていたら、今と少しは変わったのだろうか。 理陽が今いる所に、俺がいたのかな。 ま、後悔しても遅いけど。 「ありがとう!!ちゃんと呼ぶからね」 「…………別に呼ばなくて結構だよ」 ちょっと拗ねた顔で「素直じゃないなー」って言ったけど、これが俺の本当の気持ち。 好きな人が他の人と結婚する所とか、誰だって見たくないだろ。 「あ、ついでにさ、美羽のアドレスも俺に教えてよ」 10年前なら、絶対に言えなかった言葉なのにな。 気付かない間に、俺も変わったのかもしれない。 「はい、完了っと」 美羽が満足そうに笑う。 「ありがとな。じゃ、また今度」 家に帰って、早速メール作成画面にする。 こんなケータイ画面、見たい時に見れず、見なくてもいい時に見れる。 なにか、頬に温かいものが伝った。 ボンヤリ見えるケータイに『大好き』と打ち込んだ。 そのまま送信ボタンを押して、泣きながら笑って『中止』ボタンを押す。 たったこれだけだったけど、未練がなくなったような気がした。 それから、今度は『結婚おめでとう』と書いて美羽に送信した。 『送信しました』の画面を見て、俺はケータイをテーブルの上に置いた。 好きって気持ちも、メールも………… 「送信失敗、っと」 END
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